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The Center for South Asian Studies(RINDAS)

南アジア研究センター

研究活動

2021年度RINDAS経済班・総括研究会「経済発展における価値の基層的変容」

“Fundamental Changes in Economic Development in South Asia”

日時
2022年3⽉24⽇(木)13:30-17:00
場所
オンラインZoom
【参加申込制】下記URLより参加申し込み https://forms.gle/2vxzUVbxWU7cavda9 【参加申込〆切】2022年3月19日(土) 【言語】日本語 【お問い合わせ】RINDAS事務局 email:  yamaz※L★ad.ryukoku.ac.jp [ ※L★をアットマークに変換してご使用ください] 【備考】申込いただいた方には、あらためてzoomのパスコード等を送信いたします。 前日夜までに届かなかった場合は、お手数ですが、上記お問い合わせ先へご連絡下さい。 【発表】 ▼杉原薫(総合地球環境学研究所) 自由貿易と「労働の質」-南アジア型発展径路における長期変動を考える ▼絵所秀紀(法政大学) インド輸出志向産業の価値転換-周縁から中心へ ▼木曽順子(フェリス女学院大学) インド労働市場とスキル開発の可能性 【要旨】 ◆杉原薫 「自由貿易と「労働の質」-南アジア型経済発展径路における長期変動を考える」 Free Trade and the Quality of Labour: Understanding Long-term Changes in Comparative Advantage in the South Asian Path of Economic Development 南アジアの長期経済発展径路を考える場合、植民地化とともにイギリスが持ち込んだ自由貿易の思想や制度の下での世界経済への統合と、独立後の輸入代替工業化政策、さらに1990年ごろの開放政策への転換(関税障壁の縮小、外国投資の奨励)という、二つの政策転換を踏まえた三つの近代的政策体系の比較が重要である。 植民地期のインドにおける要素賦存の特徴としては、土地、労働、資本のうち、19世紀末以降の土地の希少化とともに、「無限労働供給」(abundant, disposable and cheapな労働の供給)状態の執拗な継続と、「労働の質」の低さ(教育や健康への関心の低さだけではなく、価値観における勤勉や協調性イデオロギーの浸透の弱さ、あるいはそれを制約するカーストなどの社会構造なども含まれる)が注目されてきた。 他方、近年は、水やエネルギーの確保の難しさが要素賦存にもとづく「比較優位」の文脈でも明示的に議論されるようになった。水やバイオマス・エネルギーの制約の土地生産性への影響だけでなく、疫病を通じた健康への影響や、農業以外の補助労働(とくに水や薪を確保するための労働)とも関連させて議論されてきた。逆に言えば、地下水の利用が進んで食糧の自給が達成され、電力や飲み水の確保が大きく改善されると、労働の質を制約していた要因のいくつかが緩和されることになる。それによって労働集約的な産業(輸出産業も含む)に競争力がつけば、階層的な社会構造が温存されたまま、インド経済の国際競争力が改善する可能性がある。本報告では、こうした動向をレビューしつつ、長期発展径路の持続性を展望する。 ◆絵所秀紀 「インド輸出志向産業の価値転換―周縁から中心へー」 Changing Valuation of India’s Export-Oriented Industries—From the Margin to the Centre— ネルー首相時代に策定された1956年の産業政策決議からモディ首相によるメイク・イン・インディアに至るまで、インドの経済成長戦略の中心軸は国内製造業の発展(工業化)に置かれてきた。 しかしネルー時代に支配的であった輸出ペシミズムは、現在では消滅している。本報告は、こうした経済成長戦略の変遷の中で、情報産業革命によって「輸出志向産業(当初から外国市場での販売を主とする産業)」に対する価値づけが「周縁」から「中心」へと大きく転換したことを検証する。 ◆木曽順子 「インド労働市場とスキル開発の可能性」 Indian Labour Market and the Challenges for Skill Development インドの人口はおよそ14億人(推定)。年齢階層別構成を変えながら、また労働力率の変化を伴いながらも、労働力人口は大きく膨らんできた。 しかし労働者内の格差は大きく、いわゆる高度技能をもつ世界標準の人材が一定層を形成し、また中間層労働者の規模も拡大してきた一方、なお多くの労働者が非組織部門で、またインフォーマル・セクターやインフォーマル雇用の労働者として働いている。生産年齢人口比率の上昇が成長に寄与し得る「人口ボーナス」期は、果たしてインドの社会経済開発の中で現実にどのような可能性をもつのだろうか。労働の質と技能開発、つまり近年政府が力を入れてきたスキル・インディア・ミッションを含め、人材育成の側面からこの問題を考える